かなな著
ひどい顔色だ。キョッとなる芽生をよそに、雅はノロノロと手を挙げて画面を指差す。
途端、チャンネルが変わった。
ニュースらしい。アナウンスが流れて、画面には芽生のよく知る校舎が映っていた。
『・・・第三高等学校の屋上から、人が飛び降りた。との通報をうけ、警察がかけつけた所、校庭に血を流して倒れている女性を発見しました。
すでに息はなく、搬送先の病院で死亡が確認されました。
所持品から、この高校に通う小林雅さん16歳と判明。
屋上に遺書があり、校内でいじめ等あったか、捜査を続けている模様です・・・。』
ブルーシートで覆われた、捜査中の映像も合わせて流れていた。
(・・・雅が、飛び降り?)
動けない芽生に、雅は暗い表情のままスーと近づいてくる。
手をあげて、飛びかかるような姿勢でやってくる彼女の瞳の瞳孔は開ききっていた。
(これは幽霊!)
「イヤだー!!」
芽生はあらん限りの大声で叫び、雅を張り飛ばすような勢いで、居間から逃げ出した。
階段を上がり、自分の部屋に入って、布団にもぐる。
コンコンと、ドアをたたく音。
控え目なのが、とても雅らしい。
「来ないで!入って来ないでよぅー!」
“キィー”と音がして、ドアが開く気配がした。
(!)
芽生の心臓が跳ね上がる。
ズルッ・・ズルッ・・。
何かが這う音が、近付いてくる。
「来ないでって言ってるじゃない!」
(翔太っ・・。助けてぇ。翔太ぁー。)
助けを呼んでも、彼は車の事故で、すぐには戻らないのだ。
ふいに布団のある部分が、引っ張られる気配。
必死で押さえていても、足元はどうしようもない。
布団が引き上げられ、冷気が吹き込んでくる。
恐る恐るそっちの方に目をやった芽生は、布団の中を覗き込んでいる雅の姿を認めると、そこが限界だった。
意識を手放してしまったのだった。